swatanabe’s diary

ラノベ創作、ゲーム、アニメ、仕事の話など。仕事はwebメディアの仕組み作り・アライアンスなど。

感情移入は理性が引き起こすという話が通じなくて辛い (共感と感情移入の違い)

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筆の向くままガーっと書いてるので、あとで綺麗にすると思います。

 

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「共感」と「感情移入」の違いは、前者が感性による作用で、後者が理性による作用という点ですが、そう言うとなぜか「いや感情移入の作用主体は感性でしょ」「どっちも同じでしょ」と、ほぼ間違いなく反論されてしまいます。このあいだも仕事で似たような経験がありました。なぜじゃ。

 

共感と感情移入の違い

共感と感情移入の違いは、以下のとおりです。

 

共感 感情移入
感性が起こす 理性が起こす
受動的 能動的
経験が必要 理屈が必要

 

筆者はラノベを書いてる人間なので、小説を例とします。

共感とは、自身の過去の経験と似たようなキャラクーの言動を目にしたとき、感性が刺激され、自然と気持ちが共有される作用です。あるあるネタが分かりやすいですね。

一方、感情移入とは、キャラクターの背景や価値観にふれ、そのキャラクターを応援したり嫌ったりする作用です。「感情」をキャラクターに「移入」するわけですから、その作用は能動的であり、故に理性的です。

 

違いが分かりにくい方は、創作物の悪役を考えていただけると良いかなと思います。

たとえば、両親が悪徳な金貸しのせいで自殺し、復讐を誓う息子がいたとします。このとき息子が金貸しを殺す気持ちを共有できる人は、いません。仮に皆さんの周りに「ああ、あるよね。そういうとき」と共感する人がいたら、いろいろまずいです。

ですが、悪役に感情を移入する人はたくさんいます。「そういう辛い過去があったら、そうなっちゃうのも仕方ないのかな」と悩んだり「どんな理由があっても人を殺していいわけないだろ」と怒ったり。

このように、共感と感情移入は、まったくの別物です。

 

ラノベやアニメで人気の悪役の多くは、この感情移入を上手く使っているわけですね。最近だと『PSYCHO-PASS』の槙島聖護なんか、とても分かりやすいと思います。彼が狂気に走る透徹とした理屈に感情移入した人は、たくさんいらっしゃいました。だからこそ、あそこまで人気の悪役として君臨したわけです (彼の場合、立ち居振る舞いなどキャラクターとしての魅力も立っていたので、感情移入だけが人気の要因ではありませんが)

 

スポーツなんかも、共感や感情移入の分かりやすい例だと思います。

サッカーを例にすると、Jリーグに興味ない方が試合を見ても「うまいなぁ」「すごいなぁ」としか思わないでしょう。ですが、選手が頑張ってプロになった経歴や、チームが経営に苦労していた時代を知っているファンは、必死に応援しますし、勝てば我が事のように喜びます。これは感情移入の力ですね。また、サッカーで怪我した経験を持つ人は、同じように怪我で苦労してる選手に対して「うんうん、大変だよね」と共感するものです。

 

創作における共感と感情移入の使い分け

人生経験が豊富なら共感を軸に、理屈を立てるのが得意なら感情移入を軸にプロットを組み立てると、読者を引き込める作品を作りやすいと思います。

 

筆者の場合は、現実世界をベースとした作品では共感を、ファンタジー作品では感情移入を軸に構成しています。

理由は単純で、ファンタジーは世界観それ自体が共感を阻害する可能性があるからです。たとえば、学校の勉強で苦労するのと、魔法の勉強で苦労するのとでは、同じ「学び」で苦労していても、誰もファンタジー世界で魔法を勉強した経験はないので、あるいは共感しにくい読み手が現れる恐れがあると考えています。

 

ただ、現実世界をベースとした作品でも、全体の比重としては、感情移入を多めにしています。読み手がどんな経験を持っている人なのか、わからないからです。

共感を引き起こすのは、感性です。具体的には、目の前の言葉やシーンがフックとなって読み手の奥底から過去の経験を引きずり出し、それが感性を刺激して、キャラクターと同じ気持ちが喚起されます。

言い換えれば、フックを引っかけられる経験が読者になければ、共感を誘えません。この点が共感を使う上での難しさだと思います。

 

一方、感情移入は理屈で構成できるというメリットがあります。そのため共感より的を外す可能性が低いです。またネガポジどちらの感情が惹起されても、効果としては変わらないのも使いやすい点ですね。そのため初心者でも使いやすいです。

ただし、読み手に頭を使わせるので、読書を阻害する恐れがあります。またあまりにネガティブな方向へ思考が向かってしまうと、作品を離脱されかねません。このあたりのバランスは要注意ですね。

 

メリット・デメリットをまとめると、こんな感じでしょうか。

 

  共感 感情移入
メリット ・ポジティブな感情しか作用しない=読みを阻害する恐れがない
・あるあるネタが多いテーマでは使いやすいし効果的 (学園モノなど)

・理屈で組み立てるので初心者でも使える
・外れる可能性が低い
・ネガポジどちらの感情が惹起されても効果としては変わらない

デメリット ・読者がどんな経験を持っているかわからないので、外れる可能性がある
・ある程度の深い人生経験が必要
・あまりにネガティブな方向へ思考が向かうと、キャラクターや作品が嫌われる
・読者が頭を使うので、あまりに当該シーンが多いと疲れる

 

あと、これはただの個人的な感覚ですが、ジャンルによってどちらを重視すべきか分かれる気がします。恋愛ものは共感の比重を多くすべき、とか。

 

最初はキャラクターによってどちらを使うか決めておくと楽

共感と感情移入は、どちらか一方だけで作品を構成しても問題ないと思っています。ただ個人的には、共感のほうが読者を引き込む力が圧倒的に強いと感じているので、両者は併用すべきと考えています。

ただ、共感と感情移入の使い分けは、今は自然とできるようになりましたが、最初は大変でした。両者の区別が曖昧で言語化できていなかった頃は特に。一番苦労したのは、全体の比重を考える点ですね。

 

その点を克服するために、筆者がよくやっていたセコい方法として「キャラクターごとにどちらを使うか決めておく」というのがあります。

  • 主人公:共感
  • メインヒロイン:共感
  • サブヒロイン1:感情移入
  • サブヒロイン2:感情移入

こんな感じに決め打ちにして、プロットを作ります。メインヒロインと主人公は最も登場シーンが多いので、この構成にしておくと必然、読者の共感を惹起するシーンが増えます。こんな感じでバランスを調整するわけですね。

(なお、あくまでもどちらに重きを置くかという話です。主人公に共感を設定したら、感情移入のシーンを用意しない、というわけではありません)

 

ちなみに、筆者はどんな作品であれ、メインヒロインはなるべく「共感」のほうが多くなるようにしています。ラノベの場合、ヒロインに強く惚れてもらわないと困るので。

一方、サブヒロインはだいたい「感情移入」を軸にします。これはメインヒロインと差をつけるためですね。

ちなみに、サブヒロインはテンプレ満載のキャラが多くなります。感情移入を構築するには理屈が必要であると先に説明しましたが、「ツンデレ」とか際立った属性があると、この理屈 (行動原理と言い換えてもいいです) をつけやすいからです。

 

なぜ共感と感情移入の違いが誤解されるのか

おそらく感情移入を「正の感情を移入する」と無意識に捉えてしまっている人が多いのかなと感じます (=それによって共感と混同されてしまう)。先の殺人鬼の息子を例とすると「どんな理由があっても人を殺していいわけないだろ」と怒る=負の感情を息子に抱くのは、感情移入ではないと判断してしまう、そんなイメージです。

もちろんそんなことはなくて、感情移入は正負のどちらもOKです (逆に共感は正の感情のみです)

 

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疲れてきたので、これくらいで終わりにします。なんか気が向いたり思い出したりしたら追記します (具体的にどうやって構成するのかとか書こうとも思ったけど、正直面倒臭くなりました。苦笑)

とにもかくにも、感情移入は字面のせいか感性的な作用と誤解されがちですが、早くその誤解が解けるのを願うばかりです。

 

とりあえず、そんなところです。

眠いので、寝ます。