swatanabe’s diary

ラノベ作家をめざしてた元ニートの備忘録です。基本ラノベと創作、ゲームの話しかしません。好きなようにしか書きません。

読者の想像力と文章のリズムの関係について云々 /『嫌われエースの数奇な恋路』を読んで

ちょっと仕事でバタバタしてたのと、個人的にブログ投稿を避けたい出来事が重なったため、かなり放置してました。あ、後者については、特に良くないことがあったとかではないので、ご安心をば(むしろブログ的には良いこと・・・?)

 

というわけで、久しぶりにラノベの感想。

思えば今年は、ほとんど小説を読みませんでした。5冊くらいでしょうか。やっと買った飛浩隆さんの『零號琴』とか劉慈欣さんの『三体』とかめちゃめちゃ気になってるんですが、まだ1文字も読めてない。年末年始までお預けかな・・・。

 

     *

 

というわけで。

 

嫌われエースの数奇な恋路 (電撃文庫)

嫌われエースの数奇な恋路 (電撃文庫)

 

 

今回はこちら。

いま書いてる公募用作品の後は、また青春ものに戻そうと思い、書くならスポ根かなーと思ってます。去年あたり為末大さんが出演されてたNHKの特集を拝見して以降ハマってる車椅子ラグビーあたりで(もっとも予定は未定。たぶんまたファンタジーにする可能性大。苦笑)

で。

ただ、ラノベでスポ根って全くといっていいほど聞かないので、参考作品がないのよねと知人に話したところ「公募のチェックくらいしろ」というお叱りと一緒に紹介してもらいましたのが本作。電撃大賞・最終選考作品。はいほんとスミマセン。応募する気が欠片もなかった電撃は、いっさいチェックしてませんでした。苦笑。

 

ストーリーについては軽くふれるに止めますが、

  • "ある事情" から野球部で嫌われている元エースの少年、主人公・押井数奇。いまはマネージャーとして裏から部を支えるも、彼と部員の関係は良好とは言えない状況。
  • 数奇が中2になった春。野球部にマネージャー希望者が押し寄せる。前年に甲子園一歩手前まで行った影響。入れるかどうか判断を任された数奇は「新人は不要」と判断し、全員を追い返すことに。ところが、ヒロインの凛ちゃんだけが残り、彼女だけマネージャーとして入部することに。
  • この凛ちゃん、美人でテスト成績は学年1位、そしてなぜか野球にめちゃめちゃ詳しい。おまけに「一眼レフデジカメを首から7つぶら下げて校内を徘徊している」など妙な噂が絶えない変人。
  • そんな凛ちゃん、なんでかやたら数奇に絡んでくる。もちろん数奇にその理由は検討もつかず。

こうした背景のもと、主人公の数奇が嫌われている事情と、凛ちゃんがいったい何者なのか(なんで野球に詳しいのか、野球部のマネージャーになったのか、数奇に絡んでくるのか)を少しずつ紐解きながら、甲子園をめざす野球部の日常を描いた青春ものという感じです。

以下、作品名に代えて「本作」と表記させていただきます。

 

     *

 

筆者は基本、平和な青春を描いた小説が正直そこまで好きではありません。リアリティがないので。やっぱり青春とは甘くも苦い(むしろ苦くも甘い)ものだと思ってます。だから、本作みたいなギスギスした感じ大好きです。笑。

ちょっと書きたいことがあるので感想のほうは簡潔に列挙しますと、

  • 凛ちゃんかわいい
  • リアルなギスギス感が好み
  • 凛ちゃんかわいい
  • テンポが良い上、ストーリー展開に違和感がない
  • 凛ちゃんかわいい
  • コント調のやり取りが気持ち良い
  • 凛ちゃんかわいい
  • 数奇の野球部や凛ちゃんへの気持ちの揺れ動きが年頃っぽくて良い
  • 凛ちゃんかわいい
  • 言葉選びや言い回し、語りのリズムが好み
  • 凛ちゃんかわいい
  • 凛ちゃん、いきなりバッサリいっちゃう一面とかホント好き
  • 凛ちゃんかわいい
  • 姉さんが地味に好き(飄々としてて全部わかってます的なキャラ好み)
  • 凛ちゃんかわいい

といった感じです。キャラクターが内面・外見とも好みなラインに乗ってたので、全体を通して楽しめました。

 

     *

 

で、本題。

書きたいことというのは、感想の中にも書きました、

「テンポが良い上、ストーリー展開に違和感がない」

こちらについてです。

ただ言語化するのが難しい話なので、意味不明な内容になるかと思いますが・・・と先に言い訳を。苦笑。どう書いたらいいか分からないので、とりあえず思ったこと片っ端から整理しないで書いていきます。

 

まず本作の一部を引用させていただきます。なお、ここからはネタバレを避けられないので、読みたくない方はここで戻ってください。

本作の冒頭、一度マネージャー入部を断られた凛ちゃんは、数奇が言った「マネージャーに向かない髪型」という断り文句を撤回させるため、黒髪ロングをバッサリ切り落として彼の前に再登場します。そのときの一幕がこちら。

 

「なあに? まだ気に入らないの? だったら野球部らしく五分刈りにでもすればいい?」
「いーよ、別にそんなことしなくても……」
 こいつの場合、うっかり「五分刈りにしてこい」なんて言ったら本当にやりかねん。
「髪なんて切らなくていいから、もう野球部には関わらないでくれ」
 凛は、「はあああああ」と大げさに溜息をついてから、わざとらしく腰に手を当てた。

(出典:田辺ユウ『嫌われエースの数奇な恋路』p.43より)

 

ここ最初に読んだとき、一瞬「ん?」ってなったんですよね。

その理由なんですが、うまく言語化できないので(早)、とりあえず以下をご覧ください。

 

「なあに? まだ気に入らないの? だったら野球部らしく五分刈りにでもすればいい?」
「いーよ、別にそんなことしなくても……」
 こいつの場合、うっかり「五分刈りにしてこい」なんて言ったら本当にやりかねん。
「髪なんて切らなくていいから、もう野球部には関わらないでくれ」
 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。
 凛は、「はあああああ」と大げさに溜息をついてから、わざとらしく腰に手を当てた。

 

このシーン、筆者の中では最初、数奇の「髪なんて〜」というセリフの後に、それを言った彼に関する何らかの描写が入るほうが自然じゃないかなと感じたのです。数奇が面倒くさそうに項垂れる感じの描写が、●●●のところに入るイメージ。

でも、それが本作にはありませんでした。つまり、筆者が良いと感じる「文章のリズム」と作者さんが良いと感じるリズムが違ってるんですよね。

 

なんで筆者の中で●●●の部分に一文あったほうが自然に感じたかというと、

  1. 脳内の映像で数奇が動いたから
  2. 直後の凛ちゃんの行動が、彼に対する逆接になっているから

あたりでしょうか。

1について。これはそのままです。筆者がこのシーンを読んだとき、脳内で数奇が動いただけです。文章と脳内の映像が食い違ったので「ん?」となったわけですね。

2について。数奇のセリフと凛ちゃんの挙動は、逆接的です。逆接は「しかし」などの接続詞や真逆の描写を直前に入れて意味内容を切り替えないと、受け手に違和感を与える恐れがあります。

 

ただ、です。

ここでふと思ったのが、以下のこと。

 

「・・・自分の頭の中にきちんと画が浮かんでるんだったら、それをわざわざ描写する必要ってなくない?」

 

要は、筆者の脳内の映像は「●●●にあたる一文がなくても、セリフを読んだ時点で勝手に切り替わっている」のだから、わざわざ書く必要ないじゃん? ということ。

そう思って改めて読み直すと、本作のリズムって本当に綺麗にまとまってて、おかげでストーリーのテンポが凄く良いんですよね。どんどん話が進むのに、駆け足な感じはないし、かといって情報が不足している感じもない。過不足なく必要な情報が、必要なタイミングでポンポン出てくる。野球にかけると、中日の元監督・落合博満さんのノックみたいなイメージ、はい、まったく伝わりませんね。苦笑。

 

筆者は作品を書いているとき、このリズムの調整でいつもいつも困ります。それはもう酷いくらい。たった一文のリズムを整えるために、5時間かかって結局なにも解決しないまま「もういいや今日はゲームしよ」となることも日常茶飯事。苦笑。

このリズムが整っていないと、読んでいて違和感しかないわけです。「急に場面、変わりすぎじゃね?」と。

で。これはなにもストーリーが大きく展開する箇所に限らず、先の数奇と凛ちゃんのやりとりのように、セリフのやりとり一つ一つでも同じ苦労があります。むしろこうした小さな箇所のリズムを違和感なく描写するほうが難しい。書きすぎるとテンポが悪くなりますし、かといって書かなすぎると読者が場面展開についていけなくなります。

 

本作はこの「リズムの整え方」が上手いなぁというのがとても印象的でした。きちんと「読者(というか筆者)が自然に想像するところの描写が、きれいに省かれていて無駄がない」といった感じ。

これって個人的には凄いことだと思っていまして。

たとえばセリフを例としますと、セリフを読んだ読者の脳内に画が浮かぶためには、そのセリフを読んだとき、自然と「キャラがどんな表情・挙動・気持ちなのか」あたりが伝わらなければなりません。これって言い換えれば、

  • 表情や挙動、気持ちなどを伝える必要がある=作品上セリフ化するのが必要な箇所が、きちんとセリフになっている
  • 言葉選びや言い回しの妙などによって、きちんと表情や挙動、気持ちなどが伝わるになっている

ということなんですよね。もうそろそろ皆さん「こいつなに言ってんだ?」という感じになってきたと思います。はい申し訳ありません。

筆者はこの「読者の想像に委ねる」リスクが怖くて書きすぎるきらいがあり、どうしても文量が増えます。最近でこそ意識的に削るようになってマシになりましたけど、まだまだ足りていません。そのため、こうしたリズムが本当に綺麗な作品に出逢うと、羨ましいといいますか「かわりに書いてくれません?」といいますか。苦笑。

 

読みのリズムって本当に大事だと思っていて、無駄がなくリズムが整った作品は、伝わるべきものが伝わるタイミングで伝わります。これによって、たとえば「キャラクターへの共感度および共感の確実性が上がる」ことになります。読者の没入感をより確実に担保できるようになるわけです。

もちろん、そのためにはリズムの整え方(文章力および感性)だけでなく、構成力も大事になります。この2つが噛み合って初めて文章のリズムは整うので。

 

なんかもう書いてて「本人はわかってるけど、ああこれ絶対に伝わってないな」感がハンパないことになってきたので、このへんで切りたいと思います。分かる方だけ分かっていただいて、ピンとこなかった方は「本当に無駄のない、綺麗に整った作品になっていて面白いんだな、じゃあ買おう」と思ってください(なにこの締め。苦笑)

 

ちなみに余談。

筆者は、読むときは脳内に画が浮かび、また書くときも脳内に浮かんだ画を文章化するというスタイルのため、こうした捉え方になっています。ただ正直、以上の点は筆者みたいな創作スタイルじゃない方には、あまり意味のない話というか、むしろご自身の創作を邪魔する話だと思うので、そこはご注意いただけましたら。

 

とりあえず、そんなところです。

眠いので、寝ます。