「欲しい」の本質 人を動かす隠れた心理「インサイト」の見つけ方 (宣伝会議)
- 作者: 大松孝弘,波田浩之
- 出版社/メーカー: 宣伝会議
- 発売日: 2017/12/01
- メディア: 単行本
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わりと話題で少し前から気になっていた『「欲しい」の本質』を昨日、購入。ざっと目を通しただけなので、改めて読み直す予定ですが、そのための知識整理も兼ねてこの時点での雑感を箇条書きで。
結論、全体的に発見が多くて面白かったです。ただ肝心の「欲しいの本質」=インサイトの分析については、ちょっと疑問符。
インサイトとは?
- インサイトとは、世間的には潜在的なニーズと呼ばれるもの。本人が気づいていない隠れた欲求のことです。ちなみに同書は、ニーズ=顕在化していると考えており、潜在的ニーズという単語は語義矛盾であるとしています。
- 今の時代、すべてが顧客にとって「だいたい良いんじゃないですか?」という時代。誰もが明確に欲しいものがなく、なんとなく良いと思う商品を購入しているとしています。コンビニであるお茶を買うのが、その熱烈なファンだからではなく、なんとなく良いからというわけですね。
- つまり、顧客自身も「なんでその商品を買っているのか」わかっていないわけです。だから、顧客アンケートとか実施しても、売れるヒントは隠れていません。それで失敗した例としてマクドナルドの「サラダマック」を挙げています(顧客の「ヘルシーな商品が欲しい」という声に応えて投入したら、まったく売れなかった)
- 逆にインサイトを突いた成功例として、マクドナルドの「クォーターパウンダー」や「メガマック」を挙げています(ヘルシーと真逆の商品を出したら売れた)
- 顧客が「なんとなく」買う、そんな時代に物を売るには、インサイトを見極めなければならないとしています。
こんな感じです。
インサイトを掴んだから売れたのかわからない具体例が多い点だけ不満。理論的な話はとても有益。
インサイトという考え方自体は真新しいものではなく(潜在的ニーズの言い換え)、またここで挙げられている例もネットの情報や学術論文を見る限り「うーん・・・」という感じ。たとえば、サラダマックが売れなかった理由にふれていないため、これが本当に顧客の「欲しい」を外した結果、売れなかったのか不明なのは個人的にモヤモヤ。
たとえば、
- 商品は良いけど高すぎて売れなかった
- ニーズには合っていたけど、商品のクオリティが足りていなかった
などの可能性は誰でも考えると思うので、このあたりの反証は多少なり欲しかったなという印象です。
ちなみにサラダマックとは、
(日本マクドナルドホールディングス「新メニュー『サラダマック』 5月13日(土)より発売開始」より画像引用)
こんな感じの商品らしいです(あと1種類ありますが割愛)。チキンはグリルのよう。写真を拝見する限りは、ヘルシー路線の雄・サブウェイと比べると、商品自体のクオリティが厳しかったのではという印象です(インサイトを見抜けていなかったというよりも)
ほかにスマートロックの例もあり、そこでのインサイトは「鍵をかけるのは意外に面倒くさかった」というもの。人は無意識にそう思っていたため、スマートロックがヒットしたというわけですね。
ただ、これもちょっと違和感。単純に「鍵かけたっけ?と不安になっても遠隔でロックできる」「鍵を持ち歩かなくて良い」などの顕在化していたニーズのほうが、売れた要因として強そうな気がします。いきなりインサイトに結びつけるのは、やや苦しいのではないかと(筆者もよく鍵を失くしていたので「鍵なんかなければいいのに・・・」と思ったものです。苦笑)
本書が改訂されるとして、ぜひ追加してほしいのは「取り上げている例が本当にインサイトを掴んだから売れた例なのか」という説明。メガマックなら「購入者は本当に分厚いパティにかぶりつきたくなって買ったのか?」あたり。
本書の全体の構成
第1章は「そもそもインサイトとはなにか?」の説明です。ここまで書いた話がもっと詳しく書いてあります。
第2章は、インサイトを構成する要素とインサイトの種類に関する説明。ここが一番面白かったです。ただAmazonレビューなどを拝見すると、ここが最もつまらないと思われてしまっている印象。おそらく抽象的・理論的な話だからだと思います(その理論を咀嚼して自分のケースに応用するのが、ビジネス書を読んで勉強するという行為のはずなのですが・・・)
そのため購入を検討されている方は、第1章と第2章を軽く流し読みしてみると良いかなと思います。それで興味が湧けば買う、湧かなければ買わないといった感じで。
第3章は、インサイトの見つけ方。ここは理論的な説明のみ。具体的な方法については語られません(それは第5章)。あくまでも思考の枠組みを提供してくれるだけです。
第4章は、インサイトを踏まえたプロジェクトの進め方について。ここはおまけ程度な印象。ほとんど文量もないです。
第5章は、インサイトの見つけ方。第3章の理論に対して、こちらは具体的な方法。インタビューやwebリサーチを通じたインサイトの探し方について簡単に説明されています。
第6章は、インサイトを具体的な商品・サービス設計のアイデアに落としこむ理論について。
とりあえず以上です。
眠いので寝ます。