言いたいことが形にならない、そんなもどかしさを抱えた経験は、誰もが持っているでしょう。筆者もブログや仕事で記事を書いてて「言いたいことが言葉にならない」という経験を毎日のように重ねてます。創作や格ゲーの記事では問題ないのですが、仕事や転職の記事だと全く言葉になりません。いかに真面目に働いてないかがよくわかりますね (笑)
言語化がうまくいかないときの原因は、作業工程を考えると、大きく次の4つに分類できると思います。
- 言語化に必要な知識が不足している
- 言語化に必要な感性が不足している
- 言葉そのものの意味の理解が曖昧
- そもそも語彙と表現力がない
ある小説の魅力を言語化するとしましょう。
小説の魅力を語るには、まず知識が必要です。たとえば、同作品が起承転結でわかりやすく構成されていても、そもそも起承転結という概念を知らなければ、この点を理解できません。
感性も欠かせません。小説に限らず、人は頭と心で対象を捉えます。知識は頭で捉えるために、感性は心で捉えるために必要な要素です。小説においては、共感や感情移入のトリガーとなります。そのため感性が磨かれてないと、登場人物の行動原理を理解できないなど、作品理解に支障をきたします。
ではこの2つが揃えば十分かというと、そうではありません。自身の頭と心が捉えたものに適切な言葉を当てられなければ、言語化は失敗します。そのため、言葉の意味の理解も深めなければなりません。
語彙と表現力は当たり前の話なので割愛します。この2つがなければ、そもそも適切な言語化はできません。
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ただ、以上は「物」を相手にした場合の話です。これが「人」を相手にする場合だと、さらに以下のような原因もついてきます。
- 相手が自分のことを理解していない
- 相手の言葉に対する理解と自分の理解が大きくずれている
1。
これは、相手が自分の言いたいことを整理できてないなど、自身に対する理解が曖昧なために言語化もうまくいかないケースです。
筆者は最近、フリーライターなのに、webサイトの制作をディレクションする仕事ばかりしてますが、よくクライアントから「自分たちでも曖昧だった伝えたいメッセージがクリアになった」という言葉を聞きます。これはクライアントがサイトで伝えたいことを具体化できてなかったことを意味します。
クライアントのことはクライアントが最もよく理解してるかというと、意外とそうでもありません。
たとえばコーポレートサイトをつくるとき、会社の理念やサービスのコンセプトをヒアリングすると、いずれもすらすら答えを頂けます。
ですが、理念やコンセプトは抽象的すぎて相手に伝わらないため、相手が理解できる具体的なメッセージに変換しなければいけません。抽象的な恋心を具体的なメッセージに変換するラブレターみたいに。
ですが、大半の顧客は、このラブレターが書けません。
この原因も当然、先に挙げた以下の4つです。
- 言語化に必要な知識が不足している
- 言語化に必要な感性が不足している
- 言葉そのものの意味の理解が曖昧
- そもそも語彙と表現力がない
今度は仕事を例に、この4つを考えてみましょう。あるメーカーが自社の製品をアピールするケースを想定してみます。
知識の不足とは、アピールに必要な情報の不足です。顧客の製品導入理由が分からないなど。
感性の不足とは、アピールポイントの見極め不足です。集めた情報をどう使うか判断する力、必要な情報と不要な情報を切り分ける力と言い換えてもかまいません。
たとえば製品導入理由といっても、その構成要素はさまざまです。顧客の業種、会社規模、導入部署、課題感、導入理由、ほかにもあるでしょう。このうち何を載せるのが効果的なのか、逆に載せると邪魔なのかを判断しなければいけません。そこで求められるのが感性です。
そして、両者をメッセージに落とし込むのに必要なのが、言葉の量と理解度、そして表現力です。
言語化とは、単に「相手の言っていることを言葉に起こす作業」ではありません。「相手を理解する」より前に、まず「相手に自分自身について理解してもらう、伝えたいことを整理してもらう」ことが大切です。
顧客ニーズの掘り起こし、マネジメントにおける社員の気持ちの理解など、人の思いの言語化で失敗してしまっているケースは、だいたいこの工程を見落としてるのが原因のように感じます。
2。
相手とこちらの語彙の幅に差があったり、言葉に対する感度が違ったりする場合、たまに「そういうニュアンスじゃない」というズレを生じることがあります。
この原因は、さらにいくつかに分類できます。
- a. 互いの語彙の幅や言葉に対する感度の違い
- b. テキスト化に伴って生じるニュアンスのずれ
- c. 非言語的な要素の言語化に失敗している
a. 互いの語彙の幅や言葉に対する感度の違い
同じ単語や表現でも人によって捉え方が違うのは、よくあることですね。
b. テキスト化に伴って生じるニュアンスのずれ
webサイト制作において、クライアントの話した言葉をそのまま文字化することは、まずありません。話してるときは内容が整理されてないので、これを読みやすく整形する必要があります。話し言葉は書き言葉に置換されます。また、紙幅の関係で省かれる内容も出てきます。
こうして整形されたテキストを見たクライアントが「ニュアンスが違う」と感じるケースは少なくありません。クライアント的には、自分の話からけっこう変わってるので。
c. 非言語的な要素の言語化に失敗している
非言語的な要素とは、話に込められた熱量などです。「あれだけ熱く語ったのに、それがまったく感じられない」といった失敗ケースですね。こちらの語彙力や表現力が足りなかったり、相手との言葉・表現に対する感度のずれ故に、こうなってしまいます。
まとめると、物が対象の言語化において気をつけるべきは、
- 言語化に必要な知識を身につける
- 言語化に必要な感性を身につける
- 言葉そのものの意味の理解を突き詰める
- 語彙を増やす、表現力を磨く
であり、人が対象の言語化においてはさらに
- 相手に自分のことを理解してもらう
- 相手の言葉に対する理解と自分の理解のずれを意識する
の2つが加わります。
webサイト制作をメインの例としていろいろ書いてきましたが、どんな仕事でもこの6つを意識すれば、だいたい大丈夫じゃないかなぁと思います。
とりあえず、そんなところです。
眠いので、寝ます。