swatanabe’s diary

ラノベ創作、ゲーム、アニメ、仕事の話など。仕事はwebメディアの仕組み作り・アライアンスなど。

転職エントリー vol.06 / 仕事にやる気は必要なのか

今までと少し毛色の違う話をする。

 

このあいだ、仕事で訪れた某社の営業部が「社員にやる気がなくて困ってる」という話を聞いた。営業部全体の成績が落ちつつあり、その原因が社員のモチベーション低下にあると見ているようだ。

その後、インセンティブ制度を作るなどして打開を試みたが、いまのところ目立った成果は見られないらしい。

 

     *

 

会社員は、

  • 仕事が大好きな人
  • 仕事がわりとどうでもいい人

の2種類に分かれると思う。やる気に関していえば、前者はあふれていて、後者は相対的に少ない。ちなみに、筆者は後者に属する。

 

自分がそんな人間だから、前々職でプロジェクトリーダーを担っていたときも、メンバーのやる気を頼らないマネジメントをしていた。

在職2年11ヵ月で担当した部下は、20人ほど。担当したプロジェクトは3つ。別プロジェクトに移動した後も、前チームのメンバーから「いまの上司、やりにくいです。戻ってこられませんか?」「そっちのチームに異動できませんか?」と裏で相談されるくらいには上司として信頼してもらえ、チームとして成果も出せたと思っている。

 

     *

 

当時、やる気に関しては、

  1. 水物である
  2. なくても成果は出る
  3. 成果が出ない理由を、やる気のせいにしてはいけない

と考えていた。

 

1。

人間どれだけ仕事に熱い人でも、いつどんな要因でやる気が低下するか分からない。

当時、メンバーの一人に嵐の大ファンがいたが、あのとき熱愛や解散の報道が為されていたら、彼女はそこから数日間は間違いなく休んだと思う。実際、解散が公になったとき、3日ばかり有給を取ったと本人から聞いた。

2。

手前味噌だが、前々職時代、仕事にやる気が全くない自分でも、新卒2年目・入社3ヵ月目でプロジェクトリーダーにはなれるくらいの成果は出せた (当時いたのは社員4,000人の人材系企業)。この実体験から、やる気がなくても成果は出ると考えている。

3。

仕事で成果が出ず、クライアントから「なんでですか?」と聞かれたとしよう。このとき「すみません、今月やる気なくて」と答えたら、相手は間違いなく怒る。先方は「これだけの成果を期待して、これだけのお金を払っている」のだから。

クライアントと握った成果は、約束だ。自分や部下のやる気に関係なく達成しなければならない。施策が外れたり、予期せぬ外的要因が影響したりして、未達に終わる時もあるだろう。ただ、その原因として「やる気」を持ち出すのは、クライアントに対する不義理だと考えている。

 

     *

 

ここにリーダーのジレンマがある。

人の気持ちはどうしたって揺れ動く。嫌なことがあって仕事に集中できない、悲しいことがあってやる気が出ない、という日は必ずある。筆者のように、そもそもやる気がない人もいる。

その事実を無視して「お前の事情なんか知るか。クライアントと約束してるんだから、やる気なくてもこれだけの成果を出せ」などと言おうものなら、彼・彼女は次の日、姿を見せないだろう。それはマネジメントとはいわない。ただのパワハラだ。

一方で、クライアントから見れば、やる気に関係なく成果は出してもらわなければならない。そういう契約でお金を払っているのだから。自販機で350mlのジュースを選んだのに200mlが転がり出てきたら、誰だって怒る (もちろん、仕事は自販機ほど単純なものではない)

 

     *

 

この矛盾を解消する上でポイントになるのは「義務感」だと思う。

会社員がいちばん怖いものはなにか。解雇だ。だから、やる気はなくても「最低限これだけはやらなければ」という意識は大抵の人が持っている。

義務には、人によって程度の差はあれど、必ず危機感が伴う。やらなければならないという危機感。だから義務感を煽れば人は動く。

 

ただ、義務感を叩くときは注意が必要だ。

やる気がないメンバーにとって、仕事とは「義務」だ。義務とはつまり「やらなければならないもの」だ。

つまり、メンバーは仕事を「やらされている」。筆者が「やらせている」。

この関係格差が、メンバーに不信感を植えつける恐れがある。簡単にいえば「自分だけやらされている」と思われかねない。

 

回避するには手を打つ必要がある。わかりやすいのは、こんなところだ。

  • 自分もメンバーと同じ業務を一部、担当する=背中を見せる。
  • 自分が何をやってるか、常に開示しておく。たとえば、PCを並べて仕事をする (常に画面が相手に見えていて、いま何をしてるか分かってもらえる)

 

リーダーにはリーダーの仕事がある。端的には、成果がリーダーやメンバーに依存しない、誰がやっても同様の成果を生み出せるチームづくりが、リーダーの第一の仕事だ。

だから、メンバーと同じように動いてはいけない。「できない」ではない。たとえできても、それは「やってはいけない」。例外は、リーダーが現場に入らないとチームが回らないときだけだ。

 

しかし、多少なり「同じ」苦労を共にしないと、メンバーはついてこない。メンバーとはそういうものだ (同じという点がポイント)

メンバーは通常、リーダーの仕事がどんなものか知らないし、想像を巡らすこともない。だからいきなり仕事を振ると「自分だけやらされている感」を覚えて不満を抱く。「お前ふだんなにしてんのかしらないけど、お前もやれよ」と。

 

だからこそ自分がリーダーになったときは、仕組みを作りつつ可能な限り現場に入っていた。メンバーの信頼を獲得できたのは、間違いなくそれゆえだ。その1点ゆえと言い換えてもいいと思う。

やや余談だが、筆者は毎日ニコニコでプレイ動画を見ているが、ゲームに登場する指揮官などが率先して現場仕事をこなすシーンになると、コメント欄は「率先して仕事をこなす上司の鏡」「ついていきたい上司」というコメントであふれかえる。

世間的が思う、部下と上司の理想の関係とは、そういうものだ。

 

     *

 

そういうわけで、当時の筆者もまた現場に率先して入っていた。

求人原稿制作のプロジェクトでは、メンバー5人と同じ量の制作業務を持ちつつ、クライアントへの月次報告書の作成やそのためのデータ収集、施策の立案やメンバーからの要望の対応などをこなしていた。

督促のプロジェクトでも、メンバー3人と均等に督促受け持ち顧客を割り振り、ひたすら電話をかけたり督促状を作ったりしていた。

 

メンバーは喜んだ。自分の仕事が減るのだから当然だ。

ただ、後任のリーダーは苦労したと思う。申し訳なかった。

筆者がリーダーをやったプロジェクトのメンバーは「リーダーも現場仕事をやるのが普通」だと思ってしまう。実際、離れたプロジェクトのメンバーから、後に「今のリーダーは現場の仕事をそんなにやってくれない」という愚痴を何度も聞かされた。

もちろんこれは後任のリーダーが悪いのではなく、筆者のミスだ。先述のとおり、リーダーが現場に入りすぎてはいけない。

 

     *

 

筆者は今でも仕事に対するやる気はない。働かなくて済むなら働きたくないし、仕事を通じて自己実現や社会貢献をしたいという欲もない。

働いているのは単純に「生活費のため」であり、仕事の選び方は「自分が最も得意なことだから」だ。

 

だが、そんな個人的な事情とは関係なく、任された仕事で成果は出さないといけない。

だから、仕事では常に「クライアントの想定する120%の成果を出す」ことを意識している。

 

仕事とは、やる気とは関係なく、そうあるべきものだと捉えている。