swatanabe’s diary

webライター、ラノベ書き(アマ)。だいたい創作とゲームとラノベの話です。

GA文庫大賞のお手本のような作品だと思いました。/『処刑少女の生きる道』を読んで

なんか小学生みたいなタイトルですが、読みまして。

 

処刑少女の生きる道(バージンロード) ―そして、彼女は甦る― (GA文庫)

処刑少女の生きる道(バージンロード) ―そして、彼女は甦る― (GA文庫)

 

 

久々に出たGA文庫の大賞受賞作。話題の作品ですからやっぱり読まないわけにはいきません。というわけで読了。

ちなみに作品の感想っぽい感想は書きません。本作を読んで「GA文庫ってどんな作品がお気に入りなのかなぁ」と創作の資料用に考えるだけです。そのため、これから購入しようか検討されている方の参考にはならないのでご注意ください。

というわけで、以下なるべくネタバレには配慮して書くつもりですが、さすがにゼロは無理なので、ネタバレ注意です。

 

     *

 

「すごくGA文庫大賞っぽい」

読み終えて最初に感じたのは、このひとことに尽きるかなと。

個人的にGA文庫が欲しがる作品の傾向として、

  • アイデア性のある作品テーマ
  • キャラクターの魅力
  • 感情を喚起する文章力

とりあえずこんなところがあると思っています。

ライトノベルの評価軸ってだいたい、

  • 作品テーマ
  • 世界観・設定
  • ストーリー
  • キャラクター
  • 文章力

この5つだと思いますが、GA文庫大賞におけるMUSTとWANTを乱暴に分けると、

 

MUST 作品テーマ
キャラクター
文章力
WANT ストーリー
世界観・設定

 

じゃないかなと。

言い換えれば、GA文庫大賞は「ストーリーは平凡だけど作品アイデアには自信がある」人や「キャラクターなら誰にも負けない」人、あと「文章で心を動かせる」人なんかが勝てるレーベルとして捉えています。

とはいえ、WANTは「あればいい」のではなく「新人にそこまで高いレベルは求めない」だけであって、評価点でいくと5段階中3は必須だと思っています(2以下はアウト)。他は4.5が最低ラインなイメージ。

 

MUST 作品テーマ 4.5〜5.0
キャラクター
文章力
WANT ストーリー 3.0〜
世界観・設定

 

こんな感じ。

 

特に最近の受賞作を眺めていると、アイデア性のある作品が好まれる傾向にあるのかなと感じてます。「ファンタジー要素×他の要素」といった様式で尖らせてみたり、ひとつ目を引く設定を入れてみたり。受賞作に限らずレーベル全体としても、そんな雰囲気を感じます。

その点でいうと、処刑少女は「異世界からやってきた人間が悪と見なされている」というオリジナリティが光ります。通常、異世界ものは「現世で良い思いをできなかった人たちが、無双やらハーレムやらで良い思いをする」のが様式美ですが、そこを逆転させた形ですね。転生者・被召喚者の強すぎる力が、当の異世界に悪影響を及ぼすため、秩序を守るために彼・彼女を処刑する、それが主人公たち。

 

もちろんテーマ以外にも、随所にGA文庫大賞らしさが光っていたと思います。

たとえば冒頭。帯に「衝撃的な冒頭」と書かれているように、冒頭はかなり細かい点まで力を入れて書かれた気がします。言葉選びとかも丁寧に考え抜かれた印象を覚えました。

最初、冒頭の数ページを読んだとき、正直「なんだ異世界召喚ものか」と軽く興が冷めました。さすがにもう読み飽きているので。

「でも受賞作、まして大賞選出作なのだから何かあるのだろう」。そう思って読んでいきますが、10ページ、15ページたっても何もない。召喚された少年と彼の前に現れた異世界の少女がドタバタ漫才チックに、ただ異世界のあり方や魔法(作中では導力)について説明するだけ。ストーリーもありません。延々会話。

しかも少年は異世界に召喚されてから結構な時間が経っているのに、そこまでの説明も皆無だから、置き去り感が凄いです。読者は完全に置いてけぼり。加えて冒頭の漫才説明パートは、その色々あったことを前提に会話が進むので理解が追いつかず、なかなか頭に入ってこない。そんな説明パートが延々と続きます。

 

で。20ページ目。

少年のこめかみに少女の短剣が突き刺さり、彼はあっさり死にます。あまりにもいきなり、とてもあっけなく。

実は主人公は少年ではなく、異世界の少女のほう。彼女がタイトルにもある処刑少女。異世界に悪影響を及ぼし得る日本からの被召喚者を排除して回る存在。

当然のように、びっくりです。「はい?」と。冒頭からずっと少年の視点なのも、いかにも異世界召喚ものなテンプレ展開を踏んでいるのも、地の文が少年の内面にリンクして擬音満載テンション高めだったりするのも、このギャップのためだったんだろうなと思います。完全にしてやられました。

そこからは少女視点に代わり、ちゃんとそれまで不十分だった説明もろもろも補ってくれます。

 GA文庫って、こういうトリッキーな見せ方を好む印象を持ってます。ページをめくるタイミングに合わせて展開を一気に変えるとか。伏線の張り方とかページ展開とか、細かいギミックの扱いが独特な感じ。

 

似たような点としては、善悪の構図の作り方なんかも凝っている印象があります。善悪の対立関係を端から明確に打ち出さず、悪の存在が臭うだけで明確な存在としては現れない(処刑少女でいうオーウェル大司教)。もちろんすべてがすべてそうじゃないですけど(ダンまちとか明確ですしね)

電撃とかMFとかだと、最初から素直に関係性が見える作品が多い印象で、その悪が悪たる所以や過去が隠されている印象を覚えます。だからとても分かりやすい。脳に負担がかからない。一方で、ストーリーの見せ方がシンプルになるので、だからこそ魅力的に描くのが難しいです。演出のアイデアなど地力が必要になるので。

 

余談ですけど、処刑少女はなぜ少年にナイフを突き立てる一文を、ページめくった直後に持ってこなかったんだろうと不思議に思ってます。今だと、めくった瞬間に左ページの挿絵が目に入っちゃって、若干ネタバレ感あるんですよね。

あえてイラスト先に見せることで「え? どういうこと!?」って驚きを先行させて、読者の心を離さない(放さないのではなく離さない)狙いなのかもしれませんが(webサイトなどでよく見られる、画像の吸引力を利用した視線誘導と感情喚起ですね)、このあたりどんな意図で今の構成になったのか、とても気になります。

 

     *

 

あと、文章もとてもGA文庫っぽい感じがしました。全体的に角の取れた文章で、その織りなし方にオリジナリティがあります。リズムも言葉の選び方もいい。大森藤ノさんや白鳥士郎さんが看板を張る、いかにもGA文庫における王道といったテキスト。このお二方の文体が好きな方は、文章に目を滑らせているだけでも、きっと楽しいんじゃないかと思います。

 

GA文庫のテキストって、他のレーベルと比べて結構独特だと思っています。

個人的にラノベの文体は、

  • 電撃系
  • ファンタジア系
  • その他

の3つに分かれると思ってて、乱暴に分類すると、

  • 電撃系:電撃文庫、スニーカー文庫など
  • ファンタジア系:ファンタジア文庫、MF文庫、オーバーラップ文庫など
  • その他:GA文庫、ダッシュエックス文庫など

こんなイメージです。

電撃系は、どちらかというと角川エンタメやハヤカワSFとラノベの中間なイメージ。文体はやや硬くて説明は多め。情景描写や心理描写は細かく、ストーリーはスピード感より重厚感のほうが優先順位は高め。キャラクターの振る舞いは全体的に落ち着きがあり、擬音などの具体的な修飾表現は少なめ。などなど。

ファンタジア系は、やわらかい文章で、語彙も平易さを重視。言葉は少なく改行は多く、ストーリーの重厚感よりもリズムとテンポを重視。情景描写は少なめで心理描写もコアとなる部分以外ではそこまで挟まれない印象です。ただそれだと良くも悪くも平凡な作品に落ち着いてしまうため、そこを補完する意味で(またペルソナとしている層の感受性や好みを鑑みた上で)テーマ性の強い作品を好むのかなといった印象。などなど。

その他は、レーベルごとに独特の文体を持つ印象です。今回のGAでいくと、語彙は豊かに、ある程度の難読語彙でも許容してくれる印象。情景描写はそこまで多くなく、心理描写は他のレーベルより多め。特にコアとなるシーンにおいて感情を前面に出したテキストを好む印象です。いわゆる王道。などなど。

(勝手に思うがまま書いてます。正しいかどうかは知りません)

 

で。処刑少女は隅から隅まで、とてもGA文庫っぽい文体だなぁと感じました。

特に心理描写、キャラクターの過去を掘り下げる間奏シーンなどの描写は、ああGA文庫の人たち好きそうだなぁという印象。とてもぐっとくるものがあります。言葉選びや紡ぎ方が秀逸で心に刺さるのは書いたとおりですが、キャラクターのセリフ回しなんかの細かい演出もGA文庫っぽさを感じます。各キャラクターの二面性を軸に軽妙なテンポで進む感じ(簡単にいえば、ボケとツッコミ)

 

余談ですけど、GA文庫ってレビューの内容に文章のこと書かれるケース多い印象なんですけど、どうでしょう。他のレーベルだと「文章も読みやすくていいです」とか一文で終わるケースが多い気がする一方、GA文庫はけっこう細かいところまで突っ込んでくる感じ(むしろ嬉しいんですけど)

 

バトル描写もGA文庫っぽさを感じました。

古来より主人公はピンチに陥ると一発逆転するわけですが、その方法として大きく次のようなものがあります。

  1. 新必殺技・新兵器などの導入
  2. 敵の強みを消す何かの導入
  3. 新たな仲間の登場
  4. 主人公自身のパワーアップ

昔は新必殺技・新兵器や仲間の登場が定番だった気がしますが、最近のエンタメ作品だと主人公のパワーアップが定番なのかなという印象。少なくともGA文庫はこのラインが好きじゃないかと思ってます。特に感情型の逆転劇。仲間の思いをさらなる力に変える的な一発逆転がお気に入りなのかなと。看板作品のダンまちにしてもりゅうおうのおしごと!にしても、主人公は仲間の応援や仲間を思う気持ちを力に変えて、さらなる高みに到達します。

処刑少女のバトルシーンも、戦闘描写と感情描写を織り交ぜたスタイルです。正確には1と4を混ぜた感じ。やっぱりこのタイプの戦闘は、良い意味で古臭くていいですね。妙なギミックとか凝るより、主人公の想いがストレートに出るバトルのほうが、熱さが全面に出るので個人的には好きです。

 

ところで、GA文庫のバトル描写ってスピード感を重視しているためか、意外と省略が多い印象です。戦闘中の一挙手一投足を書き切るのではなく、全体の流れのみを言語化するイメージ。このあたりもレーベルによって感性が分かれるのかなぁと勝手に想像しています。電撃なんかは細かく書くほうが好まれそう。

もっとも、これは敢えて言えばというレベルの話で、別にレーベルごとの傾向とかないと思ってます。作者によって違うだけで(じゃあなんで書いた)

 

     *

 

とにもかくにも、作品はとても面白かったですし、いろいろ思考実験も捗って創作の糧につながるヒントも得られたので、個人的には満足満足でした。

ちなみに、ここまでざーっと走り書きしてきたので、後で読みやすくするために書き直す予定です。

 

とりあえずそんなところです。

眠いので、寝ます。