swatanabe’s diary

ラノベ創作、ゲーム、アニメ、仕事の話など。仕事はwebメディアの仕組み作り・アライアンスなど。

創作初心者の頃は、ストーリーと物語を分けて考えるクセをつけたほうがいいと思う。

自分がそうだったというだけの話なのですが、ある本を読んでて思い出したので。

 

ストーリーの心理学―法・文学・生をむすぶ

ストーリーの心理学―法・文学・生をむすぶ

  • 作者: J.ブルーナー,Jerome S. Bruner,岡本夏木,吉村啓子,添田久美子
  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
  • 発売日: 2007/04
  • メディア: 単行本
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可能世界・人工知能・物語理論 (叢書 記号学的実践)

可能世界・人工知能・物語理論 (叢書 記号学的実践)

 

 

タイトルから多分に言葉遊びの感が漂いますが、ほぼ言葉遊びです。苦笑。

 

     *

 

ラノベを書き始めた頃のプロットはとても単純で、作中で起こる出来事を箇条書きにするというものでした。

たとえば、5年くらい前に「過保護なお姉ちゃんのせいで、魔王討伐の使命を託された勇者候補が家から出られない(仮)」というテーマの作品を書いたのですが(お蔵入りにしました。笑)、そのときのプロットを見返すと、

  • 妨害1:街全体を覆う結界に引っかかった弟を感知して連れ戻す
  • 幼馴染の少女が逃がすのを手伝う
  • 妨害2:街の至る所にある転移用魔法陣で追跡して連れ戻す

的な出来事ばかりが並んでて、その間をつなぐ要素がありませんでした。

 

で。この「間をつなぐ要素」がプロット段階で抜けていると、だいたい書いていて困るんですよね。「こっから次のエピソードにつなぐには、どうすればいいのか?」と。

このときプロットが、

  • 妨害1:街全体を覆う結界に引っかかった弟を感知して連れ戻す
  • 幼馴染の少女が「少年に頼まれて」逃がすのを手伝う
  • 妨害2:街の至る所にある転移用魔法陣で追跡して連れ戻す

のようになっていれば、少年が幼馴染の少女に泣きつくシーンが必要だとすぐに分かります。

 

通常、大筋がしっかりしていれば、こうした小さなエピソードはその場で考えれられます。そのため慣れてくれば、特に気にする必要もありません。

ただ駆け出しの頃は、こうした間をつなぐ要素を意識的に考えておかないと「あれ? このエピソードと次のエピソードって矛盾してない?」など、そもそもストーリーがつながらないなんてことも。

 

だからこそ創作初心者の頃は、プロットは細かいほど良いと思っています。

そこで意識しておくべきだと思うのが、ストーリーと物語の違いです。

 

     *

 

まず言葉の定義を整理すると、ストーリーは静的な状態のみを抽出したもの、物語はそこから語るべきものを、語るべき形にまとめ直したものです。

  • ストーリー:会社の沿革や履歴書といったプロフィール的なもの(静的)
  • 物語:社長メッセージや自伝といったもの(動的)

こんなイメージです。

 

ラノベに限らず、小説に含まれる要素には、以下の3つがあります。

  1. 読者にとって必要な内容
  2. 読者によっては必要じゃない内容
  3. 読者にとって邪魔な内容

 

1は、ストーリー。話の本筋です。

3はストーリーと関係ない話を冗長にするだけの内容です。唐突に入ってくる書き手の持論などが分かりやすいでしょうか。

2は、いわゆる「描写」と呼ばれるものですね。人物描写や場面描写、心理描写など。早い話、1と3に該当しない全てです。

 

先の「間をつなぐ要素」は2に該当します。

これは会社の沿革を考えると分かりやすいでしょう。

  • 2000年 創業
  • 2001年 事業A開始
  • 2002年 事業B開始

コーポレートページを見ると、沿革=会社のストーリーはこのように書かれています。なぜ事業Aの翌年に事業Bを始めたのか、その理由=間をつなぐ要素は書かれません。

 

     *

 

1〜3のうち、小説に欠かせないのは1だけですが、作品を魅力的にしたり分かりやすくしたりする上では2も必要になります。言い換えれば、ストーリーは1だけを含み、物語は1と2の両方を含む形式となります。

 

2をどこまで書くかはケースバイケースです。

たとえば、キャラクターの細かい描写。これは欲しがる読者もいれば、シンプルでいいという読者もいるでしょう。ラノベは表紙イラストがつくので、そこまで細かく書かなくても大丈夫な気がしますが、公募用原稿の場合はイラストなどないので、丁寧な描写が必要です。

たまに「書きすぎると読者の想像力が働かなくなる」と言われますが、脳内に画を浮かべながら読む人は少数派だと思います。筆者はそういうタイプなのですが、その話をすると、いつも「お前は妙だ」的な感じの反応が返ってきます。苦笑。

またラノベヒロインの可愛らしさは属性やテンプレにあるので、その意味でも金髪ツインテール、黒髪ロングなど具体的なワードで伝えたほうが良いでしょう。

 

一方、文芸小説の作家さんのインタビューなどを見てみると、詳しい描写は避けるべきという意見が大勢な感じです。理由としては「そこは読者の想像に委ねれば良く、詳細な描写は話を冗長にするだけ」が多かったでしょうか。

  

ラノベだとほかには、

  • エロシーンが多すぎる
  • キャラクターどうしのやりとり(要はセリフ)が多すぎる

といった弊害も考えられるかなと。どちらも2に該当するので、多すぎると離脱要因になりかねません。恋愛やラブコメのように、それだけを結集したジャンルの作品なら問題ないと思いますが(心情の変遷やキャラクターどうしのやりとりを楽しむジャンルなので)

 

     *

 

2の「必要かどうか判断の分かれる要素」は、すべてストーリーを肉付けする効果しか持たない=ストーリーを進める推進力にはなりません。よって、これが多すぎると話が進まないので、読者はイライラします。

 

で。プロットを作るとき、駆け出しの頃は「ストーリー」じゃなくて「物語」を書くように意識するほうが良いと思います。

こっちだと、作中の要素をだいたいすべて盛り込む必要がある=漏れがなくなるので、エピソードがつながらないなどの弊害に困るリスクが減らせます。また「ストーリーに関係ない要素=離脱を促す要素が多いな」といった気づきも得やすいです。

 

     *

 

慣れてくれば、プロットが「ストーリー」のみでも問題ないですが、駆け出しの頃はしっかり「物語」化するのが良いと思います。

 

とりあえずそんなところです。

眠いので、寝ます。