swatanabe’s diary

ラノベ創作、ゲーム、アニメ、仕事の話など。仕事はwebメディアの仕組み作り・アライアンスなど。

新人賞は傾向分析より目標設定のほうが大事だと思う

知人たちとラノベ新人賞の傾向分析の方法論や必要性をああだこうだ語り合って盛り上がったので、なんとなく思うことをば。

 

 

抽象化・理想化されたゴールは、蜃気楼に過ぎない

公募に出していた頃、新人賞の傾向を真面目に分析していたかというと、正直していませんでした。せいぜい、

  • 流行ジャンルの受賞が多いか、真新しいジャンルも多少は受賞してるか
  • 自分の作風が受け入れられそうか

このくらい。

で。当時この両者に合致するレーベルとしてGA文庫と集英社を選び、ある理由から最終的にGAを勝てるかもしれない土俵と判断しました(ある理由は後述)

 

なぜ傾向分析にそこまで力を割かなかったかというと、正解が見えにくい(というか分からない)からです。

確かに各レーベル、なんとなく「こんな特徴がある」と思える色はあります。ですが、それが正解かは中の人に聞かない限り分かりません。で。中の人に聞ける機会はまずありません。

また、そもそも傾向を分析すること自体に無理があるとも思っています。各レーベルあれだけ大量の作品があり、そこから共通する性質を抽出するのは実質不可能。前述の通り「なんとなくそう見える傾向」はありますが、あくまでも「なんとなく」。そこに該当しない作品もたくさん刊行されています。

実際レビューをもらうと、編集さんによって評価が真逆ということは、わりとよくありました。Aさんが「表現が豊かです」「この展開がいいですね」と言う一方で、Bさんは「表現力が足りない」「この展開には違和感を覚えます」と言う的な。

つまり、どれだけ傾向を分析しても、正解は見えてこないと思います。

 

具体的なゴールを置くと、進むべき道が見えてくる

筆者は傾向分析のかわりに、目標設定を大事にしていました。具体的には、自分が目標とする作家さんを決めて、とにかくその方のような作品が書けるように意識していました(筆者の場合は、白鳥士郎先生)

 

目標となるラノベ作家さんを設定するメリットは、明確な目標=ゴール=比較対象を置くことで、自分の不足を洗い出しやすくなることです。

 

傾向分析によって抽出された「求められている作品像」はフィクション、いわば蜃気楼のようなものだと考えています。ビジネスにおける凝りすぎたペルソナ設定のようなもので、分析して「なんとなく」それっぽい作品像は得られたけど、実際それは闇鍋だったり、的を外してしまっていたり、抽象的だったりする、そんな感じ。

で。こうした曖昧なゴールしか見えなかったり、そもそもゴールが設定されていなかったりすると、

  • なにを改善すればいいのか、進むべき方向性がわからない(アクセルが踏めない)
  • それぞれの力がどのレベルに達すれば十分なのか判断がつかない(ブレーキがかけられない)
  • 明後日の方向に向かって努力する可能性がある(道に迷うかもしれない)

といった弊害を生じます。

 

明確な目標=ゴールとなる作家さんを設定していると、この方と自分の差分を計ることで不足を把握できます。で。不足がある程度は埋まったと判断できれば、そこでブレーキをかけて、磨くべき力の優先順位を入れ替えられます。キャラクター造形から文章力へ、文章力からストーリー構成へ、といった具合に。

そして、この方法の最たるメリットは、方向性がズレないということ。

目標とした作家さんは今、現役で活躍されています。つまり所属するレーベルの編集さんたちは、この作家さんの作品が好きということ。であれば、その作家さんと似た作風の作品は気に入られる可能性が高いと考えられます。

よって個人的には、傾向分析で蜃気楼のような目標を設定するより、ひとり明確な作家さんをベンチマークするほうが、受賞の可能性を高められると思います。筆者は、GAに応募する前の半年間、毎日『のうりん』か『りゅうおうのおしごと!』を読んで感覚を維持・向上させるのに必死でしたが、その選択は(個人的には)正しかったと思っています。

 

レビューが"技術"から"好み"に変わってきたら傾向分析スタート

では傾向分析は不要かというと、そうではありません。ただ、自分の成長ステージによると思います。つまり必要な人と必要じゃない人がいると思います。

 

レビューの内容は、自分の力がつくほど「創作力のアドバイス」から「編集部の求める作品とのズレを抽出するもの」へ性格が変わってきます。最初は「表現力がイマイチ」や「キャラクターが淡白」「ストーリーがわかりにくい」などだった編集Aさんのコメントが、やがて「ストーリーが少し御都合主義すぎる」「敵方にもう少し魅力がほしい」などになるイメージ。要は「技術」の話から「好み」の話に変わっていきます。

 

筆者はレビューの内容に「技術」の話が多いうちは、レーベルの傾向や「どんな作品テーマが受賞に近いのか?」といったことは考えませんでした。自分はまだその成長ステージにいないと思ったからです。

で。少しずつ技術の話が消えて、編集さんの好みがちらついてきたあたりから、その好みを取り入れて応募作を書くようになりました。

筆者にとっては、これが新人賞の傾向分析でした。

 

まとめますと、傾向分析とは、とにかく何度も応募してレビューをもらい、編集部との感覚的な=好みのズレを埋めていく作業だと考えています。頭で新人賞やレーベルの特徴を分析することではなく。

 

もちろん人それぞれ持っている力や感性が違う以上、いわゆる傾向分析のほうが受賞の近道という方もいるでしょう。筆者は頭で分析するより行動してトライアンドエラーを重ねるほうが向いているので、このやり方を取っていました。あとメンタルが弱いので、できるだけ可能性の高い道を選びたかった、という理由もあります。

何はともあれ、正解は自分の手で探すしかないんだろうなと思います。

 

といったところです。

眠いので、寝ます。